パン人生最初の仕事

パン屋の仕事
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転職して最初に研修に入ったお店の怖い噂を聞いた私は、掌の人の字を何百人も飲み込みながら緊張の面持ちで研修先に向かいました。

朝の5時30分出勤。

出勤すると既に職人さん達が出勤されていて、まずは自己紹介から始まります。

キャリア30年を超えるベテランの方が2人。

一人は責任者のOさんという方で、スキンヘッドに程よく日焼けした、人を見かけだけで判断していいなら超怖そうな人でした。

もう一人は私が研修終了後に勤務するお店の次期責任者なるSさん。面接を担当してくれた人です。

他に20代前半〜中盤の若い社員さんが男女3人ずつの計6人。

そしてアルバイトさんが6人いらっしゃいました。

かなりの大所帯だと思っていましたが、それでもかなり人数がギリギリで、OさんとSさんは当時週休1日で働いていたそうです。

自己紹介も終わり早速仕事開始。私の教育係をしてくれたのは責任者のOさんでした。第一印象怖すぎ問題に直面していたのでぶっちゃけ内心は他の人に教わりたかったですが、今となっては何も知らない状態で教わったのが大ベテランのOさんで良かったなと心から思います。

私の最初の仕事はオーブン(焼成)を教えてもらいました。

その名の通りパンを焼く仕事です。🔥

言ってみればパンの完成を受け持つ大切な役割で、ミスればそれまでの工程もパーになってしまうポジションでもあります。

新人がまずどのポジションを担当するかはお店や責任者の考え等色んな状況によって変わるでしょうが、私が研修したお店はまず新人はオーブンを担当する事が常でした。

ホイロ(パン生地が発酵する事)の見極めや、成形の良し悪し、商品の完成図等などオーブンを担当するとお店の工程を逆算する事ができるので流れを体に染み込ませやすいというのが、責任者Oさんの考えだったそうです。

「発酵の見極めとかはやっていれば必ずわかるようになるから、まずは釜の流れやスピードを体に覚えさせる事」

とOさんに言われました。

また、経験者の妻からもアドバイスとして、

①パズルゲームだと思ってやる事

②何歩か先を読んで動く事

という金言を頂戴していたので、それを胸に挑みます。

そのお店のオーブンは鉄板が8枚入る奥行きのある釜が4段ついている大きめの釜。

初日はOさんに言われるがままに作業しましたが、記念すべきパン人生最初の窯出しで思いきり二の腕を火傷しました。

チーズ乗せたり、卵を塗ったり、食パンを焼く前に蓋を締めたり、やってる間にも釜はピーピー鳴ります。焼けたよ〜ってピーピー鳴ります。

ただひたすらに汗だけが出ていく。もうそんなこんなであっという間に時間が過ぎ去って行った初日でした。正直言って今後やれるのか?と不安になりまくりでした。

でも帰りの電車で、

「今日から俺のパン人生が始まるんだな」

と二の腕の火傷を見つめながら少し誇らしかったのも覚えています。

パン屋の仕事は微調整は勿論ありますが基本的には毎日同じ仕事です。ルーティンワークというやつです。

30歳での転職は決して早いスタートではないですが、そこからくる不安や緊張は必死さという大きな武器になります。転職して数年が経ちますが、パンの仕事に惰性や退屈を感じた事は1度たりともありません。

「今でもこんなに楽しいなら、上手くなったらどんだけ楽しいのだろう」

毎日ワクワクしながら目標に向かって日々過ごしています。

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