東奔西走!「クロワッサン」

不器用と雑は違います。丁寧ではない事を不器用だからだと逃げてはいけません。by祖母

⭐「クロワッサン」⭐

クロワッサンといえばパン屋さんでは主役にも縁の下の力持ちにもなれる三日月型の憎いやつです。

また、

「甘いパン」と「しょっぱいパン」

という粗野なカテゴリーしか持っていなかった私に一石を投じてくれたパンでもあります。　

クロワッサンはリバースシーターという機械を使ってバターを生地に折り込んで行きます。

そんなクロワッサンですが、現在では冷凍生地を買って成形から行っているパン屋さんの方も多いと思われます。シーターは場所を取るし、バターはすぐに柔らかくなるので夏場は大変です。

後に自分で折り込みをやってから実感しましたが、メーカーさんがライン工場で製造したクロワッサン生地は安定感が抜群です。

事実私が最初に勤務したチェーン店も、クロワッサンは工場で作っていました。

また妻が働くお店でもクロワッサンはメーカーさんに折り込むバターを指定して生地作りを依頼していました。

🥐でもやっぱり自分で折り込みできるようになりたい!

🥐かっこいいから自家製にできる限りこだわってみたい!

🥐妻がやった事ない事でマウントを取りたい!

そんな純度100%の虚栄心を満たしてくれたのは、職場の先輩Fさんでした。

先輩といってももう40年以上職人をされている超のつく大先輩です。

江戸っ子のべらんめえ口調のFさんは怖かったですがパンの事は何でも教えてくれました。

「シーターってやってみたいんですけど‥」

という私の大ざっぱな相談にも真剣に応えてくれて、現在は独立されている昔の同僚の方Kさんを紹介してくれたのです。

「交通費くらい出してあげるから仕事終わったらおいで」

と、Kさんは私の相談にも快く応えてくださいました。

私は16時に仕事を終えた後、毎日Kさんのお店でクロワッサン作りを教わる事ができました。

Kさんの教えは実にシンプルで、

①人間の都合に合わせない

のみ。後はKさんの作業所作が最高の教材になりました。

この教えはパン作り全てに通ずる事だと、やっと少しずつわかってきました。

30歳での未経験業界への転職は不安だらけでしたが、周りの人との出会いや親切で毎日確実に成長を感じる事ができます。

正確さも速さも求められる仕事ですが、どうしても一度に多くの作業を終えてしまいたくなったり、これでいいやなんて思いそうな時があります。

そんな時「人間の都合に合わせない」という教えが頭の中に駆け巡る度に、技術以上に素晴らしい事を教えてもらえたと感謝しています。